性器ヘルペス
性器ヘルペスとは?
性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)によって引き起こされる性感染症(STD)の一種です。主に性行為を介して感染し、性器やその周辺に痛みやかゆみを伴う水ぶくれや潰瘍を形成します。一度感染するとウイルスは神経節に潜伏し、体の抵抗力が落ちた際などに再活性化して症状を繰り返す再発性の病気である点が特徴です。日本では比較的患者数の多い性感染症の一つとして知られています。
ヘルペスは性器以外にも口の周りにできる口唇ヘルペスもありますが、口唇ヘルペスを含めたヘルペスの全体像について詳しく知りたい方は、こちらの「ヘルペス」のページもご覧ください。
「性器ヘルペス」について知っておくべきことを、症状、感染経路から検査、治療まで解説しましたので、是非最後までお読みください。
原因
性器ヘルペスの原因は、単純ヘルペスウイルス(HSV)の中でも「ヘルペスウイルス2型」が性器ヘルペスの主な原因となりますが、オーラルセックスによって口唇ヘルペスの主な原因となる「ヘルペスウイルス1型」が性器に感染することもあります。
感染経路としては、主に以下のものが挙げられます。
性行為(膣性交、オーラルセックス):
感染者の粘膜や皮膚に直接接触することでウイルスが移行することにより感染します。特に水ぶくれなどの症状がある時期は感染力が強いですが、なにも症状がない時期でもウイルスを排出していることがあり、この期間にも感染する可能性はあります。
症状
性器ヘルペスの症状は、感染後2日から10日程度の潜伏期間を経て発症します。初めて感染した際(初感染)と、再発時では症状の程度が異なることが一般的です。
初感染時の症状(初回の性器ヘルペス)
再発時よりも症状が強く現れる傾向があります。
①性器、肛門周囲、太ももの内側、お尻などに、かゆみやヒリヒリとした違和感(前駆症状)が生じます。
②その後、赤みのある小さなぶつぶつ(小丘疹)が出現し、数日以内に痛みを伴う水ぶくれ(小水疱)に変化します。
③水ぶくれは破れて潰瘍(ただれ)となり、強い痛みを伴います。歩行時や排尿時に痛みが悪化することもあります。
その他にも、鼠径部(足の付け根)のリンパ節が腫れて痛みを感じることや、発熱、頭痛、倦怠感などの全身症状を伴うこともあります。
再発時の症状
初感染時よりも症状が軽く、短期間で治まることが多いです。
多くの場合、症状が出る前に患部周辺にピリピリ、チクチクといった前兆を感じます。
水ぶくれや潰瘍の数が少なく、痛みも比較的軽度です。全身症状を伴うことは稀です。
再発の頻度や程度は個人差が大きく、ストレス、疲労、睡眠不足、月経、日光浴などが引き金となることがあります。
帯状疱疹との違い
性器ヘルペスは帯状疱疹(たいじょうほうしん)と間違われることもあります。違いとしては、帯状疱疹は体の左右どちらか一方の片側の神経に沿って、帯状(おびじょう)に発疹が現れるのが特徴になります。帯状疱疹はデリケートゾーンだけでなく、胸、背中、腹部、顔面など、全身どこにでも発症することがあります。
検査
性器ヘルペスの診断は、視診と問診でおこなわれます。患部の状態を診察し、症状の経過などを問診します。特徴的な水ぶくれや潰瘍が見られる場合は診断することができます。
検査することもでき、患部の病変部を綿棒で軽くこすり採取した検体を用いて、ヘルペスウイルスの抗原を検出します。検査キットによる迅速検査のため10分ほどで結果がわかります。費用は保険適用で自己負担3割で1100円ほどです。
治療
性器ヘルペスの治療は、主に抗ウイルス薬(ファムシクロビル、バラシクロビルなど)の内服や炎症を抑える外用薬によっておこなわれます。早期に服用を開始するほど効果が高く、症状の軽減や治癒期間の短縮が期待できます。
ウイルスを完全に体内から除去することはできませんが、症状を抑えたり再発を抑制したりすることが可能です。
痛みが強い場合には、鎮痛剤(ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなど)の内服をおこなうこともあります。
PIT療法
PITは「Patient Initiated Therapy」の略称で、あらかじめPIT療法を実施している医療機関(皮膚科や泌尿器科など)で抗ウイルス薬を処方してもらっておき、ヘルペス再発の初期症状を自覚した段階で、患者さんご自身の判断で抗ウイルス薬を内服する治療法です。
ファムシクロビルは初期症状が出てから6時間以内に4錠を内服し、12時間後に再度4錠、合計2回内服します。年に3回以上再発を繰り返す方が主な対象となります。
アメナメビルは初期症状が出てから6時間以内に6錠を1回のみ内服します。年間の再発回数に制限はありません。ファムシクロビルより薬代は高いですが、1回の服用で完結しより簡便なのが特徴です。
再発抑制療法
年に6回以上ヘルペス症状が再発するなど、再発を繰り返す場合、症状がない状態でも抗ウイルス薬(バラシクロビルを1日1回1錠)を長期間内服する再発抑制療法(予防内服)が保険適用にておこなわれることがあります。口唇ヘルペスは保険適用ではなく、性器ヘルペスのみが保険適用になります。
ウイルスの活性化を抑制し、再発の頻度を減らすことにより、生活の質を向上させることができます。
注意点
性器ヘルペスに罹患した場合、または感染の可能性がある場合には、以下の点に注意が必要です。
早期に受診:
症状が出たら、男性は皮膚科・泌尿器科、女性は皮膚科・婦人科などをできるだけ早くに受診しましょう。早期に治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、治癒を早めることができます。
性行為の制限:
症状が出ている期間は、性行為を控えましょう。水ぶくれや潰瘍がある時期は感染力が非常に高く、パートナーに感染させるリスクが大幅に上昇します。症状が治まっても、無症状時のウイルス排出のリスクがあるため、コンドームの正しい使用が重要です。
コンドームの使用:
コンドームは性器ヘルペスの感染リスクを低減させる有効な手段ですが、患部がコンドームで覆われない範囲にある場合は感染を防ぎきれないこともあります。
再発予防:
ストレス、疲労、不規則な生活などは免疫力の低下を招き、再発の引き金となることがあります。規則正しい生活、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動など、免疫力を高める生活習慣を心がけましょう。
新生児ヘルペスへの注意:
妊娠中に性器ヘルペスに感染したり、再発したりした場合は、出産時に赤ちゃんに感染するリスクがあります。必ず主治医に伝え、適切な対応(帝王切開など)について相談しましょう。
性器ヘルペスは再発性の病気ですが、適切な治療と管理を行うことで、症状をコントロールし、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。不安な点があれば、医療機関で相談することが大切です。
当院泌尿器科の診療内容
新宿駅前クリニックの泌尿器科および皮膚科では、「性器ヘルペス」の診断・迅速検査・治療をおこなっています。抗ウイルス薬の飲み薬(ファムシクロビル、バラシクロビルなど)や炎症を抑える塗り薬などを処方しております。PIT療法や再発抑制療法も実施しています。
予約不要で診療しておりますので、お気軽にご相談ください。